せきれい丸 11 日記 07 /14 2020 せきれい丸 11場面海面に 顔を出したら 泳いでいる人や 力つきて沈んでゆく人 意識がなく浮かんでいる人が 波間に見える。 遠くで誰かが 呼んでいる。 「ーりゅうたー りゅうた 頑張れー 」 りゅうちゃんを 呼んでいる。りゅうちゃんが 助かったのかも知れない。 ホッとしたら 風の寒さと 水の冷たさで 気が遠くなってきた。 その時
せきれい丸 10 日記 07 /10 2020 せきれい丸 10場面僕のからだは 深くふかく 沈んでゆく。父さんも きっと船と一緒に 海の底にいるんだ。その時 突然 父さんの声がした。 「たかし 生きるんだ 」父さんは じっと僕を見ている。「たかし 生きるんだ 」あんな 厳しい父さんを 見たのは 初めてだ。 「母さんを 頼んだぞ。たかし」
せきれい丸 9 日記 07 /09 2020 せきれい丸 第九場面沖へ出ると、西風に あおられて せきれい丸は 横倒しになったまま すぐに沈んでしまった。 デッキにいた僕は 放り出されて 海の中ヘ引き込まれてた。
せきれい丸 8 日記 07 /05 2020 せきれい丸 八場面1945年12月9日朝 せきれい丸は 定員の三倍もの乗客を 乗せたまま 岩屋港を出た。空は晴れていたが 強い風で波は高かった。それでも 船は 明石港ヘ向けて 走り続けた。
せきれい丸 7 日記 07 /02 2020 せきれい丸 7場面船長が 止めるのを聞かず 無理やり乗りこんで来る人たちで せきれい丸の中は 人と荷物で 溢れかえっている。僕はデッキへ上がった。りゅうた君は 船室ヘ降りたのか 逢えなかった。